インターネットが常に使えない状況なので、遅れての報告になりますが、世界社会フォーラムに先駆けて行われた「世界教育フォーラム」についてのレポートです。
WSFと同時に開催される教育をテーマにしたフォーラムで、今回のベレン開催が第6回となります。1月26日、27日の2日間、ベレンで最も新しいコンベンションセンターHANGARにて行われました。「もう一つの社会を可能にするためのもう一つの教育」を考えるフォーラムで、参加者は約7500人、その多くは公立学校の教員、自治体の教育担当者、大学生、大学教員、教育活動を行なうNGOのスタッフなどで、内訳はおそらく寺本さんの書かれていたものと同じ割合で、海外からはラテンアメリカからの参加者が多い感触でした。ちなみに同日、保健、フリーメディア、水に関するフォーラムも開催されたようです。多分野に関心のある人には辛い選択です。
一日目は、開会式に登場予定のパラ州知事が代理を立て欠席、というハプニング?がありましたが、午前の全体カンファレンスでは解放の神学の大御所レオナルド・ボフ、元環境大臣で北部アクレ州上院議員のマリーナ・シルヴァ、パウロ・フレイレ*研究所所長の教育学者モアシル・ガドッチの三人がそれぞれもう一つの教育の可能性とアマゾンで開催されるフォーラムの意義について力強くメッセージを演説しました。ボフの演説で「持続性(発展を伴う意味でなく)、思いやり、敬意、次世代に自然環境を残すために世界に課された責任、連帯と協力」というキーワードが提示されると、会場は拍手喝采の渦(個々の詳細な内容は別稿とします)。
*『被抑圧者の教育学』で著名なブラジルの教育学者。サンパウロにあるパウロ・フレイレ研究所はWSF主催団体の一つでもあります。
ランチにはベレン名物のヴァタパー(ココナッツ油とマンジオッカ芋のシチューに海老とジャンブーという痺れ草をトッピングしたもの。もちろん例の黄色い粉も!)を食し、午後は6つの分科会(私は「教育、人権、協力、平和の文化」に参加)に分かれ、コーディネーターがそれぞれの分科会の基本概念を確認した後、15人ずつのグループに分かれて90分!そのテーマについて議論し、提言をまとめるワークショップが始まりました。一つの分科会会場に1000人以上集まっているので、会場は歩くスペースもない程。人気の分科会は参加者が多過ぎ、入場制限もされ、参加者からのブーイングが起きていました。ボランティアも一苦労のようでした。最終的に各グループで出された提言をコーディネーターがまとめる間、フロアから発言の機会が設けられ、一人3分という短い時間ながら20人以上の参加者が、公立学校における生徒による暴力、教員の待遇、カリキュラムへの権利教育の導入などについて自分の意見や活動紹介をアピール。個人的にはこれが一番印象的でした。様々な立場で教育にかかわる実践を重ねている人々が意見を相互に交換できる貴重な機会ではないかと思います。最後に、ワード文書5ページ程に箇条書きでまとめられた提言をコーディネーターがスクリーンに投影し読み上げ、フロアから内容の確認を取ります。この進行方法、ブラジルの直接民主主義の実践例「参加型予算」を思い出させます。
会議が終わったのは7時半、外は真っ暗。帰りに会場の入り口にフォーラムののぼりを立てているスタッフを発見、ブラジル人の友人は「準備が遅すぎる・・もう半分終わったのに・・」。(後日談:翌日には取り外されていました。なぜ??)
2日目午前中のカンファレンスには、ラテンアメリカの批判的教育学の一人者カルロス・ロドリゲス・ブランダン、NGO土地なし農民運動からクリスチーナ・ヴァルガス、先住民代表としてカインガング族の教育学者ホザニ・フェルナンデスが熱弁を振るいました(手話の通訳がありました)。33歳という若さのフェルナンデスさんが流暢なポルトガル語で語る**先住民に対する抑圧の歴史と先住民地域の教育に関する訴えを肌で感じ、ベレンまで来て良かった、と実感しました。会場ではその後、昨日の分科会での提言を確認する会議が行なわれましたが、私はラリーのために会場を後にしました。
**「私を見て『彼女はポルトガル語を話すから本当の先住民じゃない』と思う人がたくさんいるが、それこそが世界が作っている先住民のステレオタイプ。本当の先住民を誰も知らないし、知ろうとしてはいない」という語りが印象に残りました。
世界教育フォーラムでの議論については、別稿でまとめたいと思っています。
0 件のコメント:
コメントを投稿